足関節インピンジメント症候群SYMPTOMS
足関節インピンジメント症候群とはあしかんせついんぴんじめんとしょうこうぐん
この疾患の主な症状
インピンジメントとは『はさまみ込まれる』といった意味です。
異常な骨組織が衝突すること、軟部組織が関節内に挟み込まれることにより足関節の正常な可動域が疼痛を伴い制限される状態です。
発生部位により足関節前方インピンジメント症候群(AAIS:anterior ankle impingement syndrome)および足関節後方インピンジメント症候群(PAIS:posterior ankle impingement syndrome)に分類しています。
原因と病態
足関節前方インピンジメント症候群(AAIS)
骨性のものでは、脛骨前縁や距骨背側に骨棘を認め、背屈時を中心に足関節前方の疼痛を有する疾患です。骨棘の原因としては不明な部分が多く、現在は背屈時に起こる脛骨と距骨の衝突が骨棘の原因とする説が広く支持されています。衝突を起こす原因としては背屈強制の反復だけではなく、慢性足関節不安定症との関連が示唆されています。骨棘に伴う背屈可動域制限が身体所見としては重要です。
軟部組織によるものでは、前外側と前内側に分かれており、ともに外傷との関連が指摘されています。滑膜組織や瘢痕組織が増生したことに加えて、足関節の不安定性によりインピンジが生じると言われています。
足関節後方インピンジメント症候群(PAIS)
足関節後方の組織が足関節底屈により挟まれることで起こる疾患で、三角骨がインピンジメントの原因となる三角骨障害のほか、大きな距骨突起外側結節(Stieda結節)や足関節後方の靭帯、関節包組織が原因となって生じるインピンジメントです。
足関節の底屈を繰り返す競技としてはバレーダンス(ポアント肢位)、サッカー選手(院ステップキック)が多く、ジャンプやダッシュを繰り返す競技選手でも多く見られます。
距骨後突起k外側結節の内側を走行する長母趾屈筋腱の腱鞘炎もしばしば合併します。
診断
足関節前方インピンジメント症候群(AAIS)
運動時、運動後の足関節前方の疼痛を認めます。足関節前方に圧痛を認め、背屈強制やしゃがみ込みで疼痛が誘発されます。
足関節後方インピンジメント症候群(PAIS)
運動時、運動後の足関節後方の疼痛を認めます。疼痛に伴う足関節底屈制限を認めます。足関節底屈強制で疼痛が誘発されます。長母趾屈筋腱炎を併発されている場合は抵抗下で母趾を底屈することで後足部に疼痛が誘発されます。
予防と治療
足関節前方インピンジメント症候群(AAIS)
運動制限や鎮痛剤、サポーターで治療を開始します。足関節の不安定性を評価し、不安定性を認めた場合は腓骨筋力を含めた足関節・足部の筋力訓練を行います。足部が内側にはいるような(toe in)歩行異常がないかもチェックします。これらの保存加療が無効であれば、手術加療が必要となります。
足関節後方インピンジメント症候群(PAIS)
運動制限や鎮痛剤、サポーターで治療を開始します。足関節の不安定性や横アーチの剛性に関わる腓骨筋、後脛骨筋、足部縦アーチの安定性に関わる母趾外転筋、短趾伸筋などの筋力訓練や滑走改善を図ります。長母趾屈筋やアキレス腱周囲の軟部組織の滑走改善なども行います。これらの保存加療が無効であれば、手術加療が必要となります。
引用元: MB Orthop.34(2):79-87.2021「足関節インピンジメント症候群」
https://www.zenniti.com/f/b/show/b01/1276/zc01/1.html