踵部疼痛症候群SYMPTOMS

踵部疼痛症候群とはしょうぶとうつうしょうこうぐん

この疾患の主な症状

踵部に疼痛を訴える疾患を踵部疼痛症候群と呼ばれています。
主な疾患に、①足底腱膜炎、②足底繊維腫症、③踵部脂肪褥症候群(heel pad syndrome)、④踵骨疲労骨折、⑤絞扼性神経障害などが挙げられます。

①足底腱膜炎

足底部における踵部痛の最大の原因疾患と言われています。40~50代に多く見られます。症状としては起床時の一歩目に拍動性の疼痛を認めます。疼痛は歩行を継続するといったん減少しますが、長時間歩行すると再度出現することが多いです。

②足底繊維腫

足底腱膜に発生する両性繊維性増殖性病変です。腫瘤は足底腱膜の土踏まずに後発します。

③踵部脂肪辱症候群(heel pad syndrome)

Heel padは踵部脂肪褥と呼ばれていて、踵骨結節部直下(踵の足底部の柔らかい場所)で衝撃吸収機能を有します。足底腱膜炎と間違われることが多い疾患です。

④踵骨疲労骨折

踵骨は、足部では中足骨に次いで多く疲労骨折が発生する場所です。

⑤神経絞扼性障害

踵部の焼けるような痛み、ひりひり(ピリピリなど)する痛みを訴えられます。
これらの症状が片側のみであれば、絞扼性神経障害を疑います。

原因と病態

①足底腱膜炎

扁平足でも凹足でも起こります。
高度肥満、脚長差、overuse(使いすぎ)、低クッション性の靴などが挙げられます。

③踵部脂肪褥症候群(heel pad syndrome)

病態は、脂肪褥の炎症や滑液包炎による脂肪褥の損傷や萎縮によって疼痛が誘発されます。
原因は加齢や肥満が一因と言われています。

④踵骨疲労骨折

疼痛出現前に活動量が増えた、固い地面で活動するようになったなどのエピソードが多いです。

⑤絞扼性神経障害

踵部痛の原因となる絞扼性神経障害には
★足根管(そくこんかん)症候群
★Baxter neuropathyがあります。
足根管症候群は、脛骨内側後方にあるトンネルで脛骨神経が圧迫されている疾患です。踵以外の足底部全体のしびれを認めることが多いです。
Baxter neuropathyは、外側足底神経の枝が圧迫されている疾患です。

診断

①足底腱膜炎

<局所所見>
踵骨隆起内側と足底腱膜に沿って圧痛を認めます。
他動的に足関節を強制背屈したり、母趾を強制伸展すると疼痛が誘発されます。

<画像所見>
荷重時の単純X線像で足のアライメント異常や踵骨棘の有無を評価します。
エコーでは足底腱膜の肥厚や足底腱膜内の低エコー像をチェックします。
MRIで精査を施行することが多いです。

②足底繊維腫症

診断にはMRIが有用です。

③踵部脂肪褥症候群(heel pad syndrome)

局所所見は踵骨隆起底部中央の腫脹、熱感と圧痛です。
画像診断はMRIが有用です。

④踵骨疲労骨折

局所所見は踵骨結節部底側だけでなく、踵骨側面まで広範囲に認めます。
画像所見は単純X線では発症早期にはわからないことが多く、MRIが有用です。

⑤絞扼性神経障害

画像診断は単純X線で癒合症などの骨の変形がないかをチェックし、エコー、MRIを用いてガングリオンの有無などを評価します。

予防と治療

①足底腱膜炎

基本的には保存加療が中心です。ストレッチや鎮痛剤内服、足底板の装着などが有用です。当院では拡散型圧力波治療と運動療法(eccentric exercise)を行います。これらの治療に抵抗する場合は、6か月を超えると保険範囲内で収束型体外衝撃波の治療ができる医療機関に紹介することが可能です。

②足底繊維腫症

治療は足底腱膜炎に準じます。

③踵部脂肪褥症候群(heel pad syndrome)

治療は安静、鎮痛剤内服やテーピング、足底板です。

④踵骨疲労骨折

治療は疼痛の程度により、完全免荷とすることもあります。疼痛に応じて足底板を作成して負荷を軽減します。

⑤絞扼性神経障害

治療は基本的に保存治療を行い、内服や足底板を用います。これらに抵抗性の場合は手術(足根管開放術)を行うことがあります。

引用元: MB Orhop.32(1):57-62,2019「踵部疼痛症候群」
https://www.zenniti.com/f/b/show/b01/1090/zc01/1.html

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